不毛の「武器輸出三原則」に訣別せよ 〜南スーダンPKOへの銃弾提供は当然

国連南スーダン派遣団(UNMISS)に参加している韓国軍に対し、政府は12月23日、陸上自衛隊の小銃弾1万発を提供した。国連平和維持活動(PKO)協力法に基づき、国連を通じて行ったもので、「緊急の必要性・人道性が極めて高い」として武器輸出三原則の例外扱いとした。


南スーダンでは大統領派と前大統領派との武力衝突が勃発、10万人以上が国内で難民となり、1000人以上の死者が出ている。韓国軍は宿営地に1万5000人の難民を受け入れており、戦闘に巻き込まれれば、弾薬不足に陥る。韓国軍側が要請で銃弾を提供したもので、蕃基文国連事務総長が謝意を表明している。これは当然の措置である。これを批判する者は平和維持破壊者だ。PKO協力法や武器禁輸三原則に引っかかるというなら、こっちのほうこそ改めねばならない。


想起しておくべきは、国連のPKO活動は転機に差し掛かっているということだ。冷戦後の1990年代に頻発する内戦を踏まえ必要に応じて武装勢力の殺害も認める「平和強制部隊」の考えが浮上したが、1993年のソマリア事件で挫折した。だが、国際対テロ戦争を経て再び「平和強制」論が浮上している。国連安保理事会は今年3月、コンゴ(旧ザイール)の「国連コンゴ安定化派遣団(MONUSCO)」に戦闘部隊を創設することを全会一致で採択。武装集団の拡大の防止・無力化・武装解除を行うために3000人規模の戦闘部隊を派遣した。南スーダンの場合は7400人規模の従来のPKO部隊だが、国連安保理は12月23日、6000人規模の軍事・警察要員の増派を決めている。


日本のPKO協力法はあまりにも国際常識から逸脱しており、国際貢献にも消極的である。
PKO5原則
①停戦合意
②紛争当事者の同意
③日本の中立
④撤収可能
⑤必要最小限の武器使用
を根本的に改める必要がある。
①②のような縛りを掛ければPKO活動そのものができなくなる。
⑤については、国連はPKO活動で「要員を防護するための武器使用」(Aタイプ)と「任務遂行の対する妨害を排除する武器使用」(Bタイプ)の2つを認めているにもかかわらず、日本はBタイプを「武力行使の恐れがある」として違憲扱いし認めていない。これでは治安維持活動はまっとうできない。早急に国際標準に転換すべきである。国連の平和維持活動が「国権の発動としての武力行使」に該当しないのは当たり前の話だ。


銃弾提供を「武器輸出三原則」から逸脱しているとの主張があるが、そもそも三原則のほうがおかしい。それにこうした主張は三原則をはき違えている。

3原則は1967年に当時の佐藤内閣が打ち出したもので、
①共産圏
②国連決議による輸出禁止国
③紛争当事国や恐れのある国−への武器輸出を禁じるとしたものだ。

このうち①は当然で、自由と民主主義を抹殺しようとする共産国に武器を輸出すれば、自ら首を絞めることになる。②も国際社会の平和と安全のため国連が決めたことに従うのは加盟国の義務だろう。問題は③である。紛争の「恐れのある国」というのは余りにも曖昧で、世界中の国がその恐れがあると言っても過言ではない。これでは同盟国も「敵国」扱いし、戦略的な関係が構築できない。


三原則はその後、悪いほうに変質した。1976年に安保に疎い三木内閣が政府統一見解をまとめ、適用範囲を拡大し①従来の3原則対象地域には「武器」の輸出を認めない②対象地域外の地域は「武器」の輸出を慎む③武器製造関連設備の輸出も「武器」に準じて取り扱う−とした。これによって事実上、禁輸してしまった。しかも「武器」の定義について「軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供されるもの」としたため、軍隊で使用されるものはすべて武器扱いにされた。例えばカンボジアでPKOに参加した文民警察官の防弾チョッキも武器とみなされ、現地警察官に供給できなかった。非武装論に匹敵する不毛な原則である。


今回の韓国軍への銃弾提供は、国連の要請であり紛争国に提供したわけではない。これまでこうした提供を三原則に抵触するとか、違憲扱いしてきたほうが間違っている。同盟国への武器輸出については民主党も大幅に緩和している。

2011年12月に野田政権は
①平和貢献や国際協力での防衛装備品の海外移転を可能とする
②防衛装備品の国際共同開発・生産への参加を可能にする
③国際共同開発・生産は参加国と安全保障面で協力関係にあり日本の安全保障に資する場合に実施し、目的外使用や第3国移転には日本の事前同意を義務付ける―とした。


安倍政権が12月に閣議決定した初の国家安全保障戦略(NSS)と新防衛大綱では、「武器輸出緩和へ新原則」を定めるとしている。年明けにも本格的な検討を始めるとしているが、一国も早く不毛の三原則に訣別すべきである。